Oct 16, 2009

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 東京電力福島第1原発事故で原発の津波対策の不備が表面化した。事態が深刻化した要因は、想定の甘さと危機意識の低さだ。菅直人首相が中部電力浜岡原発の停止要請に踏み切るなど、安全性への不信は根深い。背景を探ると、津波のリスクを過小評価してきた国や電力業界の体質が浮かび上がった。(長内洋介)

 原子力関係者によると、日本の原発の津波対策は、想定した波高より敷地が高ければ「安全」と評価される。どの程度高ければ安全かを示す基準はない。

 原発の建設では、造成に必要な土砂の量だけ地盤を掘削する。この工事の都合によって敷地の標高が決まり、それが結果的に想定波高を超えていればよい。

 津波による敷地の浸水は設計上、想定されていない。今回の事故は、非常用ディーゼル発電機の稼働に必要な海水ポンプが水没したことが一因だが、こうした電気機器の耐水性は十分に評価されていなかった。

 一般に原発の設備は、高い圧力や温度などに耐えられるよう十分に余裕を持って設計されている。だが、津波に関しては敷地の標高や浸水時の機器の健全性という重要な部分で「余裕度」の概念が希薄だった。

 「津波は敷地に来ない」「機器は水に漬からない」。この過信ともいえる想定に立つ以上、余裕度を高める改善策や、万一に備えて何重もの対策を講じる多重防護の発想は生まれない。津波対策は安全設計の根幹が抜け落ちていた。

 ■古い設計思想

 福島第1原発の建設が始まったのは昭和42年。標高約35メートルの台地を掘り下げ、同10メートルの敷地に主要施設を設置した。水没した海水ポンプは、さらに低い同4メートルの海側エリアに置かれた。

 東電は当初、チリ地震津波(昭和35年)の3・1メートルを過去最高の潮位と分析。海側エリアの標高まで90センチしかなかったが、安全だと評価し、国も許可した。

 平成14年、東電は想定を最大5・7メートルに修正。これだと海側エリアは浸水するため、海水ポンプの高さを引き上げる工事を行い「対策済み」とした。ただ、このポンプは被害が小さかった福島第2では建屋内に収納していたが、福島第1では工事後も外部にむき出しのままだった。対策が妥当だったか検証が必要だ。

 約15メートルの大津波は敷地内のタービン建屋にも流入。非常用ディーゼル発電機が浸水し、全電源喪失に至った。しかし、同発電機は福島第2では原子炉建屋内にある。原子炉建屋はタービン建屋より気密性が高く、海岸からも比較的遠いので浸水のリスクが小さい。同じタイプの原発では、同発電機を原子炉建屋内に置くのが現在の主流という。

 運転開始から40年が経過した福島第1は、津波に脆弱(ぜいじゃく)な古い設計思想が残っていたといえそうだ。

 一方、中部電力は浜岡原発の津波を約8メートルと想定。だが国は今後、東海地震を含む巨大地震の想定を見直す方針で、同社の対策の妥当性が問われる。

 ■後手に回る対応

 津波への備えの甘さは国も同じだった。原子力安全委員会は18年に原発の耐震指針を改定した際、津波の記述は末尾2行だけで、具体策は盛り込まなかった。

 東電は21年、福島第1の揺れの再評価を原子力安全・保安院に提出したが、津波の評価は先送りした。この審議過程では、東北で大津波が起きた貞観地震(869年)の津波堆積物の調査から、再来の可能性を検討すべきだとの意見が専門家から出たが、東電は「十分な情報がない」と応じず、保安院も容認した。

 一方、安全委は昨年末、「津波堆積物に関する調査・研究結果を慎重に検討する」などと、ようやく具体策を示したが、大津波が襲ったのはその3カ月後。対応は後手に回った。

 原発の津波被害は世界で前例がなく、それが油断を生んだのか。2004(平成16)年のインド洋大津波の際、日本の原発を津波が襲う可能性が研究者の間で議論されたが、「あり得ない」とされた。関係者は「想像力が足りなかった」と悔やむ。

 原発の脅威となり得る自然災害は、ほかにも火山噴火や地滑り、竜巻など少なくない。「想定外」を繰り返さないために、国や電力業界には潜在的なリスクの総点検が求められる。

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 中部電力が浜岡原子力発電所の運転停止を表明したことを受け、菅直人首相は9日、「大変よかった。政府としても電力全体が足りなくならないよう対応に力を入れたい」と中部電力の決断を歓迎した。唐突に表明した停止要請からわずか3日で中部電力が応じたことにより「政治主導」に手応えを感じたに違いない。東京電力福島第1原発事故の対応が後手に回った汚名を返上し、政権浮揚の足がかりにしたいとの思惑も見え隠れする。

 首相は東日本大震災発生後、ぶら下がり取材を拒否してきたが、9日夜は官邸のエントランスに姿を見せると記者団の質問に満足そうに応じた。「海江田万里経済産業相がしっかりと(中部電力に)説明してもらったことでいい形ができた」とも語った。

 この直前、首相周辺は記者団に「首相が声かけにこたえる」とささやいており、首相が演出効果を狙ったことは間違いない。もっとも他の質問は一切受け付けず、ひとしきり話すと足早に官邸を立ち去った。

 一方、自民党の大島理森副総裁は「首相は電力供給をどうカバーするのか。大変心配だ」と懸念を表明。公明党の山口那津男代表も「極めて唐突で説明不足だ。政治的パフォーマンスと指摘されても仕方がない」と非難した。

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